人事部の女神さまの憂いは続く

昼休みにニシユリを連れ出して、会社から徒歩10分ほどの役所に婚姻届けを提出した後、そのまま昼食に来ていた。

昼飯をこうやってニシユリと食べるのは久しぶり。こいつが新人の頃とかは、まだ俺も人事のプロモーションも一緒にみていたのでランチミーティングなんかすることもあったけど、会社がおっきくなるにつれてそんな機会もなくなっていた。

「ほんと、こんなとこでよかったの?」

今来ているのは、その頃よく来ていた早い、安い、うまいの三拍子そろった定食屋。

「だって藤木さんが無理矢理予定ねじ込むから。午後みっちりスケジュール詰まってるんですもん」

そう言いながらから揚げをほおばっている。うまそうに食ってるな、とニシユリを見ながら俺は思う。

この前から、熱意がないとか、事務的だとか俺に文句を言っていたけど、絶対にこいつの方がムードも感慨もない。

せっかく入籍後だし、ちょっといい店でゆっくりランチでもと思ってスケジュールを押さえたのに、時間がもったいないとか言い始めたし。

こういうのって名前もかわることだし、女の方が特別に感じたりしないのか?

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