人事部の女神さまの憂いは続く

笑いながら話している香織さんをびっくりしてみていると

「あ、俺はニシユリ、テクニシャン説聞いたよ」

立花さんのおかしそうな声が聞こえた。

「お兄ちゃん的には聞きたくなかったけどね」

そう付け足しているけど、自分でわかるくらいきっと顔が真っ赤になってしまっている。

ほんと噂好きのこの会社やだ、と両手で顔を覆っていると

「まぁ、それは当たってるかもな」

なぜかご機嫌になっている藤木さん。もう、なんてことを言うんだと、手の間から顔をのぞくと、長い腕が伸びてきて抱き寄せられた。

「頼むから俺以外の男誘惑しないでよ」

そういう藤木さんは変な色気を出してきていて、キュンとなってしまった。思わずその肩に抱き着くようにしていると

「だから、いちゃつくなって!」

声とともに立花さんが手に持っていたはずのチーズが飛んできた。


やっぱり世界は俺様中心に動いていると思ってそうな暴君だけど、私って愛されてるなって幸せな気分になれる。
こんなことなら噂も悪くないなって思えた。

<その後④憂いの元は社内の噂 FIN>
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