Drinking Dance
お互いの名前を呼ぶことから始めましょう
何だかとんでもないものを引き受けてしまった気がする…。

「ただいまー」

1人暮らしの我が家に帰ると、私は息を吐いた。

ゴロリとベッドのうえで横になると、先ほどの出来事を振り返った。

35年の人生で初めて彼女ができた星崎さんのために、部下である私が恋愛指導をすることになるなんて…。

「そんなにも恋愛経験は豊富じゃないっつーの」

私しか頼る人がいなかったからって本人は言うけれども、頼られた私からして見たらどうすることもできない。

――お前、つまんねー

記憶の奥底に閉じ込めたその言葉が閃光のように頭の中を走った。

「つまんない私に頼ったって仕方がないのにね…」

自分で呟いて、自嘲気味に笑った。

「お風呂入ろう…」

頭の中を走っている言葉を振り払うように首を横に振ると、ベッドから起きあがった。
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