黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

繋がる想い




「・・・おかしいな」

ヘリオトロープが建物の陰に隠れながら訝しげに呟いた。

私もその背に隠れるようにしながら相槌を打つ。

確かに・・・おかしいのだ。

もういくつも街を抜け王都に入ろうとしているのに、ここまで来る間見張りという見張りがいなかったのである。

賞金をかけてあんな手配書のようなものまで出しているくらいだから、てっきりそこら中にいるものだと思っていたのに。

それに人通りもほとんど無いので、人目を気にしてひやっとすることはあまりなかった。

そのお陰で予定よりも大分早く着いたので結果としては良かったと言ってもいいのだろうが、なんとなく嫌な感じがして胸をざわめかせた。

「まあ、ともかく」

と、そう言ってヘリオトロープが紙を取り出した。地図ではない。クワオアにもらった順路がメモされた紙だ。

「ここから先は路地ばかりだし、見つかる心配はほとんど無いだろうな。・・・ちゃんとついて来い」

「・・・わかってるよ」

きっと成人式の日、あの日の路地での顛末のことを思い出して言っているのだろう。

歩き始めたヘリオトロープの後ろにぴたりと位置取りながら、私はこっそり唇を尖らせた。

まあ私も助けを求めなかったという点では悪かったといえば・・・悪かったけれど。

元はと言えばヘリオトロープがどんどん1人で歩いていってしまったからだというのに。

むくれてそう思い返しながら、はたと気がつく。

・・・あれ、なんか最近は無理しなくてもついていけるような。

今も。


「―――着いたぞ」

ヘリオトロープの声に顔を上げる。

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