黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

ハジマリのはじまり




あれから2日間、ほとんどうずくまって過ごした。

着替えのために朝夜と、1日に3度食事を持ってくるメイドが幾度かドアを叩くだけで、部屋には沈黙が張りついている。

ゆっくりと目を開ける。昨日近づきもしなかった食事の入った皿が目に入って、直ぐに視線を外した。

あの日から、3度目の、朝。

あいつに、迎えに来ると告げられた日。

ダイアンも、ひいてはオルカイトルムネも、今日誰かが来るなんて、信じていない様子だったけれど。

私にはわかる。あいつは、必ずやって来る。


だから、きっと今日はここで過ごす最後の日。

「別に、感慨なんてないけど・・・」

そっと床に指を這わす。

この味気無い灰色の床とも、お別れだ。

「誕生日に新しい門出だなんて、幸先がいいのかな」

ひとり呟いて苦笑してから気がつく。

そうか、今日は少なくとも1回は、ここから外に出なくてはいけないのだ。

国民たちは国の恥だと理解している城の者たちとは違い、ただの可哀想な口のきけないお姫様だと思っているのだから、姿くらい見せなくては怪しまれるだろう。


こんこん、とドアがノックされる。

その音に顔を向けると、ふくよかな女性が入ってきた。

リーンだ。このような面倒なときに私の支度を任されるのはメイド長だから仕方がないのだろうが、気の毒に思う。

まあそれも、今日で終わりだけれど。
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