貴方との奇跡

29歳〜世界が動き出す〜

結局、最後まで歓迎会参加してしまった。

本当にこう言う時に、電話が鳴らないんだよね。

夜、久しぶりに夜空を見た。
まだ、夜は寒さが残るこの時期。

北斗七星が輝いてた。

早く、帰ってお風呂入ろう。

そんな事、考えてたら。



「茜。」

聞きなれてる可愛らしい声が聞こえた。

振り向く時間も与えないで抱きついて来た。

「逢いたかった。」

泣いていた。

私、仕事でも迷惑掛け、親友にも迷惑掛けてたんだ。

「木村さん。お先に帰るわね。今夜は呼ばれない様に祈ってるわ。」

師長が優しく声を掛けてくれた。

周りのスタッフも気を利かせ何も言わないで帰って行った。

「楓。心配掛けてごめんね。元気にしてるから。」

私、何やってるんだろう。

あの時、どうしてあんな事したんだろう。

「ばか!! 別に大輔先輩と別れても親友だよ。何で何も相談してくれなかったの?」

泣きじゃくる楓の顔が見れなかった。

「ごめん。今日迎えに来てもらったんだ。ちゃんと楓に話して欲しかったから。」

先輩すまなさそうに声を掛けて来た。

先輩は悪くない。

悪いのはすべて私。

ピー、ピー。

携帯が鳴った。

「患者さんからだ。」

楓を離して電話に出た。

ストーマが破れたから来て欲しいんだって。

「ごめん。緊急で呼ばれたから行かないと。」

正直電話が鳴ったのは有りがたかった。

何話したら良いかも解らない中、逃げ出したかった。

結局、今も昔も変わらない。

「お願いだから今度ゆっくり話そう。だから、連絡先教えて。」

本当は交換したくなかった。

でも、交換する羽目になった。

「今度ゆっくり。」

逃げる様にその場を去った。
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