みんなみたいに上手に生きられない君へ
和也くんの話をしていたはずなのに、泣きながらそんなことを訴えた私に、カウンセリングを受けてみない?と、先生は言った。

やっぱり私、ちょっと話しただけでも分かるくらいに、おかしいのかな......。



「やっぱり私、おかしいんですか......?」

「感受性が豊かなんだと思う。
カウンセリングを受ければ、今よりも少し楽になれるかもしれない」

 

おかしいおかしくない、とははっきり断言しなかった先生に、少しだけほっとした。

なぜだかわからないけど、断言はされたくなかったのかな。



「そうした方が良いって自分でも思います.....。
だけど、勇気が出ないんです。
人と関わるのがこわくて、いつも目の前のことから逃げだしてしまう。逃げたくないのに。強い人間になりたいのに......」

「強い人間になるためには、弱い自分も認めることが必要だと思うな」

「......」

「すごく難しいことだけどね。
先生もまだ出来てない」

「先生も?」

「うん、まだもがいてる」

   

もがいてる人間だとはとても思えないくらいに、先生は優しくふわりと笑う。


......そういうものなのかな。

そうは見えなかった和也くんにもあったように、みんなどこかに弱い自分を持ってたりするのかな。
                                                  


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