みんなみたいに上手に生きられない君へ
「......。保健室にきてたってことは、斉藤さんも何か相談したいことがあったの?」

「う、......ん」



相談する勇気が持てずに結局帰ろうとしてたけど。

何て答えたらいいのか分からず、あいまいにうなずく。



「......そうなんだ。
酒井先生は、信頼できる人だよ」



渡辺くんはそれだけ言うと、特にそれ以上詮索してくることもなく、じゃあまたと部屋を出ていった。

以前送ってもらった時と同じように。





こうして、思いがけない形で渡辺くんの秘密を知ってしまったわけだけど、それはすぐに秘密ではなくなってしまった。

本人の意思とは、関係なしに。
< 56 / 207 >

この作品をシェア

pagetop