1ページの物語。
-交渉-


「おーい、さっさと委員会決めろよー。

帰れないぞー」


誰か早く立候補してくれないかな。

再放送のドラマ始まっちゃうよ。



「なぁ、なぁ」


「んー?」


机の下で突いていたスマホから後ろに視線を向けた。


「どうしたの?」


「お前、委員会入んねぇの?」


「委員会…ねぇ」


黒板には《保健委員》と《体育委員》が空欄だ。



「どっちも嫌だなぁ…と、いうことで私はパス」


今は委員会より、欲しい服がいつセールになるか見極めないと…そっちの方が重要だ。



「あ、その服可愛いな」


「そう?私はこっちの方がって…後ろから覗かないでよ」


「こっちの方が絶対お前に似合う。

お前ピンク似合うのにいつも綺麗目の黒ばっか着てんだろ、この可愛系のピンクにしろ」


「あんた、私の話聞いてないでしょ」


そう言いつつもお気に入りに追加して購入候補に入れる。


「あんたこそ委員会入れば?体育祭あるんだし、体育委員しなよ。

派手好き野郎が活躍できる時よ」


「お祭り男の俺だからそりゃ体育委員しようと思うんだけどさぁ」


あ、この服も可愛い…でも1万5千円て何。

学生に買わす気ないでしょ、この値段。


「体育祭もあるし、一緒にいる時間長くなるから委員の相手って重要じゃん?」


「…そうだね」


一緒にいる時間が長くなる…か。

スマホを突く手が止まり、後ろにいる奴の声に集中する。


「だから、一緒にいたい奴と一緒にしたいじゃん」


「…だから?」


「体育委員一緒にやろうぜ」


こいつ…

ゆっくり振り返り、真っ正面から視線を向ける。


「ねぇ」


「…なんだよ」


「耳真っ赤だよ」


「…うるせぇよ」


いつもは派手好き野郎なのに、誘う時はいつも小さな声。

そして、そんな時は大体耳が真っ赤…そんな所が可愛いと思ってしまう愛されキャラ。


「ねぇ」


「何だよ」


スマホを奴に向ける。


「この服買ってくれるならやる」


スマホのページは先程お気に入りに追加したピンクの可愛らしいワンピース。


「…買ったらそれ着て俺とデートしてくれんの?」


「当たり前でしょ」


「……なぁ、知ってる?その服似合うって言った時から」


笑いながら大きい手がいきなり私の長い髪を耳に掛けた。


「お前も耳真っ赤だけど?」


自分もさっきは耳真っ赤だったくせに、耳を真っ赤にする私を馬鹿にする様な怪しい笑みを向けてくる。


「…うるさいよ、ばーか」


「ハハっ、かーわいっ」


「…うっさい」


「じゃあ、交渉成立だな。

先生ー!体育委員決まったー!」


「おおー!じゃあ、誰か保健委員してくれー!」


「早く帰りたい…」



デートの髪型研究しなくちゃ。


【交渉】


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