bajo la luz de la luna
uno
 アタシは香桔未来(こうけつ みくる)。若干18歳にして、ここらを仕切るマフィア・ローサファミリーの第23代目ボスだ。正式名はエストレジャ・香桔未来。スペイン人の父と日本人の母を持つアタシは、スペインで自由気儘に育ってきた。勿論、ボスになるための特訓を嫌という程させられたのだけど。

 3歳の時は、授業をサボったお仕置きだと言われて丸一日逆さ吊りにされた。10歳の時は、銃と僅かな食料だけを持って何処かのジャングルに置き去りにされた。そういえば、弾丸をひたすら避ける訓練もあったっけ。射撃主が五人になった時は、流石に身の危険を感じた。

 お陰で今は、ちょっとやそっとのことじゃ動じない。常にクールで冷静沈着。マフィア界でのアタシの通り名は、何故か“クロノス”だ。神話に出てくる時の神の名前なんだけど、一体誰が付けたのか……



『ボス、何ボケッとしてんのよ!注文しなきゃっ!!』



 ふと気付くと、チリ人のソニア・グラナダが口を尖らせていた。短めの黒髪で強い光を放つ黒い目。女性なら誰でも憧れるスタイル抜群の体なのに、何と35歳とは意外や意外。相変わらず粋の良いスペイン語を放っている。
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