魔法使い、拾います!
第一話 路地裏に魔法使い
今朝もよく晴れた、爽やかな朝であった。腰まである艶やかな黒髪を揺らして、リュイは颯爽と玄関の扉を開けた。胸元のペンダントを握りしめて、明け方の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。

雑貨屋を営むリュイはこれから雑貨の仕入れのため、品数豊富な王都ハラのマーケットへ行こうとしていた。

リュイの家は一階が雑貨屋、二階が生活スペースになっており、玄関と言っても雑貨屋の入り口と兼用だ。その玄関の軒先で、握っていたテントウムシのペンダントトップに向かって小さく呟いた。

「父さん、母さん、いつも見守ってくれてありがとう。いつかこのシルバーのテントウムシが七色になるように、今日も一日頑張るからね。」

一見するとどこか大人びた雰囲気のあるリュイなのだが、十八歳になったばかりのまだ初々しい少女である。

そんなリュイは一年前に落雷事故で両親を亡くし、残された雑貨屋を一人で切り盛りしていた。大人びて見えるのは悲しみを乗り越えて日々を精一杯楽しんでいる勲章なのかもしれない。

ルトアンゼ王国の華やかな王都ハラから少し離れた郊外に、穏やかな田舎町カタは在る。リュイが住んでいる町だ。

カタは町全体が丘になっていて、緩やかな斜面に家々が点在している。隣家とも少し距離があるようなのんびりした町で丘の頂上には町長の屋敷があった。丘の向こうに下ると、立ち入り禁止の野原が広がっており、その先は断崖絶壁の海が広がる。

その断崖絶壁の途中には洞窟があり、魔法使いになりたい者達がそこで修行をしているのだと言う。魔法使いのような特別な人になるには、大変な修行が必要なのだろう。と、考えるとリュイは身の引き締まる思いだ。

「魔法使いのことは置いといて……。今日はどんな掘り出し物に出会えるかな。」

リュイは王都へ続く歩き慣れた道をわくわくしながら下った
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