魔法使い、拾います!
コトンとテーブルにコップを置き、項垂れているヴァル。かける言葉もなく見守っていると、顔を上げたヴァルの紺碧の瞳と目が合った。

「リュイ、助かりました。完全復活。全快です。」

ニコッと微笑まれ、リュイは一瞬で真っ赤に頬を染めた。

「ま…魔法で水を薬に変えたの?」

リュイは出だしの声が上擦るほど、自分が動揺している事を自覚できた。

魔法に驚いたのは勿論なのだが、それ以上にヴァルから繰り出された笑顔の破壊力が半端ない。元々整った顔立ちなのだ、当然と言えば当然である。

「はい。なので、大抵の魔法使いは医者要らずってわけです。時と場合によりますけどね。」

「へぇ、凄いね。治って良かったよ。」

照れてはいても心配していた気持ちに嘘はない。照れていることを何とか誤魔化したリュイは、胸を撫でおろした。

「しかし、僕はとても運がいい。偶然とはいえ……あの場でリュイに会えるなんて。拾っていただき感謝します。」

ヴァルはそう言うとソファーから下りてリュイの前で片膝をつき手のひらを胸に当てた。

「拾わないって言ったよね?婚約者だっているんでしょう?その人の所へ行きなよ。」

「それが出来ないから、こうしてお願いしているのです。」

「どういうこと?」
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