魔法使い、拾います!
ヴァルが駆け寄り抱き起す。ティアは軽く脳震盪をおこしたのだろう、気を失っていた。

「ティア!ティア!しっかりして下さい……。あ……血が……。」

「ティアさん!」

リュイも駆け寄りヴァルに抱えられているティアを覗き込む。

「ん……。」

ティアがゆっくりと目を開けた。そしてヴァルの顔を認識すると嬉しそうに微笑む。

「あぁ……ヴァル。やっと会えた。」

血の滲む腕を伸ばし、ティアはヴァルの頬に触れた。そのティアの手をヴァルは握りしめ、切ない瞳で見つめる。

「直ぐに治しますから。」

そんな二人の姿を目の当たりにして、リュイの心臓は破裂しそうなほど痛んだ。
美男美女のなんて絵になる二人。これが本来のあるべき姿なのだ。元々自分が入り込む隙なんて微塵も無かったのに。どうしてこんなおこがましい気持ちを抱いてしまったのだろう。

リュイは今更ながらに、惨めでちっぽけな自分の存在を思い知った。

ふと、壊れたドアの方を見ると、わざとではないにしろ結果的に娘を傷付けてしまったジョナが、罰悪そうに近付いて来る。

「ティア……、私は何という事を……。」

「お父様、私は平気よ。それより約束を守ってね。ヴァルと二人きりで話をさせてちょうだい。」

「……好きにすればいい。」

ジョナは項垂れ静かに頷いた。
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