湯殿からあがると部屋の中にはキュリオの身の回りの世話を担当している女官たちが待機していた。バスローブに身を包んだキュリオの腕の中で丸くなる少女の肌は蒸気し、淡いピンク色に染まっている。

その様子をみた女官のひとりが安心したように言葉を発した。

「とても小さくていらしたので心配しましたが……お体に大事はないようですね」

「あぁ、置き去りにされて間もないのかもしれない。珍しい髪と瞳の色をしているから親もすぐ見つかるだろう」

女官たちはキュリオの言葉に頷きながら、赤ん坊に上質な生地の肌着を着せてやる。女の子らしくピンクの可愛らしいリボンがあしらわれており、白く透き通った肌によく似合っていた。

「んまぁ! 本当に珠のように可愛らしい子っ!!」

うっとりしたように頬を染める彼女たちは次々に赤ん坊を抱きかかえる。赤ん坊はというと、ぐずりもせず、ただ驚いたように彼女らの顔をじっと見つめていた。

――コンコン

そんな時、和やかな雰囲気に暗雲を齎(もらた)すノック音が響く。

『……キュリオ様、少しよろしいでしょうか?』

「入れ」

かしこまったような声が扉の外からかかり、キュリオが答えると最近就任したばかりの年若い家臣が深く頭を下げながら入ってきた。

『はっ! 失礼いたします』

「――赤ん坊の発見された場所、その容姿から現在付近の村や町をあたっております。今のところ有力な情報はありませんが、いささか気になる目撃情報がありまして……」

「……話を聞こう」

ふたりはキュリオの部屋の一角にある白銀の細工が施されている美しいソファに腰をおろした。

報告を聞きながら運ばれてきた紅茶のカップを手に取るが、民に目撃されたというその内容がにわかに信じられず……美しい王は整った眉間に深い皺を刻んだ。

そして、女官に抱きかかえられている赤ん坊に目を向けると静かに呟く。

「……まさか、な」






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