【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

夢に殺される少女と夢を支配する王

――ゆっくり深い森を歩く金髪の青年は目先にある暗闇を前に足を止めた。

『…………』

目を凝らしてみると、闇に取り込まれたであろう人影をかろうじて確認することができる。
一歩近づくごとに蜷局を巻き、一層強くなる闇の気配。

近づけばこちらまで飲みこまれてしまいそうな深い暗黒――。

しかし青年は無言のまま金色の光を纏い、一歩、また一歩と距離を縮めていく。

『……夢に滅されるつもりか? ……』

"…………"

青年の声に返事はない。すでに魂は抜けており、肉体のみが留まっている状態なのかもしれない。

『…………』

青年はさらに闇の中を進み、黒い渦のなかで横たわる少女の体を抱き起し問う。

『……我の声が聞こえるな? ……』

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