【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

もうひとりの千年王

 エデンは王宮のもっとも奥深い位置にある、歴代の王たちが残した古文書の連なる巨大な書庫へ来ていた。
ひんやりとした空気に特別なものを感じながら目的の場所へと続くいくつかの明かりに火を灯していく。どれほどの王たちがここを出入りし、過去の記録に目を通しながら未来に想いを馳せただろう。

雷帝が辿り着いた場所は清らかな水に囲まれ光の溢れる祭壇のような場所だった。
中心に置かれた台座の上には金細工の縁取りが美しい本と、それに寄り添うように大輪の花を封じ込めた水晶が添えてある。

”小さな国の小さなお姫様のお話”

かなり古い時代のもののはずだが、著者の強い想いが宿っているせいかそれは色褪せることなく今も輝き続けている。

これらの所有者であった当時の王は、王のみが立ち入りを許されたこの神聖な書庫での保管だけでは満足できず、この祭壇のような特別なものを作ってしまうほどにそれらを大切にしていたとみられる。そして――

同じく当時の物と思われる大輪の花は、今でも朽ちること無く美しく水晶の中で咲き誇っていた。


――意味深な金縁の本と大輪の花――


「…………」

台座の前で片膝をついたエデンは、まるでそこに当時の王が座しているかのように敬意を払い頭を下げる。しかしエデンとてこの国の王なのだから、このように頭を下げる必要はない。

しかし自然と跪いてしまうには正当な理由があった。

それもそのはず……金の縁取りが許されたこの本は、当時千年王であった偉大な<雷の王>が記したものだからだ。

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