【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

異国の色合い

「……何かありましたかな? キュリオ様」

何気なく人払いをした王の行動にガーラントが真顔で問いかけてくる。

「あぁ、この子のことで少し……な」

キュリオは傾けるミルクボトルに大人しく吸い付く赤子に視線を落とす。

「聖獣の森で拾われたとのことでしたが、いやはや不思議なこともあるものですなぁ……」

(……それだけではない。キュリオ様直々にミルクをお与えになるなど……)

異例づくしの光景を前にまじまじと赤子見つめるガーラントへキュリオが手短に話す。

「悠久の民ではない可能性が出ている。よほどの見落としがない限り報告は覆らない」

「ふむ……たしかに他国の民かもしれませんな。珍しい毛色をしておる……」

キュリオがまだ不確定の事案を彼にこうして相談するにはわけがある。
考えるように豊かな顎鬚をなでるガーラントはただの年老いた魔導師ではないのだ。彼は"悠久の頭脳"とまで謳われ、キュリオの代では唯一<大魔導師>の称号を賜った優秀な人材だった。

「……あぁ、その件で四大国へ使いを出そうと思っているのだが、打ってつけの者はいないかい?」

王の使いとして他国へ出向く行為は、自国の王の信頼を得ている者と認識され、それはそれは大変名誉なことなのだ。
そして悠久の外を目にする滅多にない貴重な経験だからこそ、従者の働きを目の当たりにしている<大魔導師>に人選を願いたいとキュリオは言っているのだ。
そのことはガーラントも重々承知で、何より使者に渡される加護の灯が絶対にその身を守ってくれるとわかっているからこそ、人選の幅が広いこともよく理解している。

(……キュリオ様の使いとして四大国へ……王の意を伝える大事な役目……)

小さな見習い魔導師は手元をじっと見つめ、その貴重な体験に胸を躍らせている。
そして、意を決した彼は――

「……も、申し上げますっ! キュリオ様! ガーラント先生!!」

突如大きな声を上げたアレスにキュリオとガーラントの視線が集まる。

「どうしたんだい? アレス」

「急になんじゃ……?」

落ち着いた調子で話を促すキュリオと、ただただ驚いているガーラント。

「はいっ! その使者に私が立候補してもよろしいでしょうか!?」

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