【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

<革命の王>と<雷帝>の名

「いや……いい、隠すことでもないからな」

一度目を閉じたエデン王の瞳が開かれると、力強い琥珀色の瞳が悲し気に揺れていた。

「<雷帝>っていう呼び名は俺の……いや、俺達の永遠の恋人がそう呼んでいるんだ」

「恋人……？」

王が特別な異性をつくらないのが当たり前だと思っていたアレスらは少なからず大きな衝撃を受けた。そして彼の言い方も気になる。

(俺達の……って、他の王たちにとってもそうなのだろうか……？　それとも雷の国の民にとって……？)

先を聞きたいのは山々だが、痛いほど厳しい眼差しを傍に感じる。

「教官……」

「……アレス、この話はもうするな」

「も、申し訳ありません……」

萎縮したアレスはエデンに礼を言い頭を下げ後ろに下がる。偉大な雷の王が機嫌を損ねたわけではないが、それから琥珀色の瞳が晴れることはなく、彼にとってとても重大な出来事がすぐそこで燻っているような気がした。

「俺はこれから行くところがある。お前ら用事があって来たんだろう？」

「……っ！　……その通りでございます！　エデン王へキュリオ様から書簡を預かって参りました」

問われ慌てたブラストがキュリオからの書簡を取り出す。

「そのキュリオ殿の書簡ってやつは俺じゃないとわからない内容か？」

差し出された手紙を受け取り、己の名が記されているの確認した雷の王は再度ブラストへと顔を向けた。

「是非エデン王に読んでいただきたいのですが、御用がおありでしたら"分かる者が返答してくれればいい"とキュリオ様より仰せつかっておりますので」

「すまないな……そうしてもらえると有難い」

エデンが頷き後方を振り返ると背後から武装した男が現れ、彼のそばで片膝をついた。そして差し出された悠久の王の書簡を両手で受け取るとそのまま門の中へと消えて行く。

「……雷の国は皆鎧着てんだな」

不思議そうに呟いたカイは普段の悠久の家臣たちの姿を思い浮かべてみる。大概みな軽装で、重々しい武装をしている者はほとんど見かけない。それに比べて死の国と雷の国はどこか違う。なぜその衣装が定着したのかとなると、もしかしたら遥か遠い歴史へとつながるのかもしれない。

(<革命の王>って言ってたよな。争いごとでもあったのか？)

またもカイは目の前にいるエデン王の逞しい体に目を向けた。奇跡的な肉体美がとても羨ましく、有無を言わせぬその気迫に武人としての憧れがそこにはあった。