君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜

「単純って、そんなにダメなこと?」




きゆと流人は一度病院へ行ったが、その後、人里離れた流人の家へ向かった。

それは夏祭り会場に近い病院から少しでも離れたいという、流人のよこしまな気持ちがそうさせた。
この小さな島は、確かに、何もかもが筒抜けだ。

田中医院に急に東京から美人になったきゆが帰ってきたというだけでも大きなニュースなのに、偶然にも同じ東京から若くてイケメン医師がどういうことかこの小さな島に赴任してきたなんて、憶測と妄想で島の人達はドキドキして注目している。流人にしてみれば別に大した問題ではなかったが、地元のきゆの事を考えるとできるだけ騒動にならないように配慮してあげたかった。

イチャイチャしたいのなら、俺の家は最適だ。
今日は何があってもイチャイチャする…

ご褒美をもらえるという大きな盾を武器に、流人はきゆに甘えて、久しぶりに楽しみたいと思っていた。


「流ちゃんの家は、本当にいつ来ても綺麗…」



「だって、全く住んでないからそりゃ綺麗だよ」


流人はそう言いながら、部屋の窓を全開にする。
島の夏の夜は、クーラーがいらないくらい涼しい海風が入ってくる。

暗闇の中、木々の揺れる音がかすかに聞こえるだだっ広いベランダに、流人は大きなソファを引きずり出した。







< 83 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop