副社長とふたり暮らし=愛育される日々
○Love nest1○

恋するおまじない=甘い罠



もうすぐ今年も一年が終わろうとしている。

街中にクリスマスケーキやプレゼントの広告が貼られ、昼間は寒々しい並木道も、今の時間はイルミネーションが輝いているだろう。


セーターやハイネックの暖かそうな服装の人たちが見守る中、私は花柄のワンピースを一枚着ただけの姿で、真っ白な床にぺたんと座っている。私の周りには、色とりどりの花びらがまき散らされていた。

ここは地下一階にある閉鎖的なスタジオ。世間はクリスマスムード一色だけれど、今私が撮影しているのは来春に発売される商品のプロモーションのため、こんな具合だ。


化粧品会社“ユーフォリックモード”が手掛ける、オリジナルブランドの香水のイメージモデルをしている私。

普段は私ひとりでカメラに納まっているのだけれど、今日は違う。……こんなに居心地の悪い撮影があっただろうか。


「りらちゃん、もっと海都(かいと)くんの目を見てくれるかなー?」


カメラマンさんの指示が出されて、おずおずと見上げると、美男子の整った顔がアップで映る。

なに、この天使みたいな男の子は! 背中に羽が、頭に輪っかが見えるくらいキラキラしていらっしゃる!

男性に免疫のない私は、無意識に目を逸らしてしまう。

やっぱり無謀だった……。普段は地味女のこの私が、メンズモデルの子と一緒に撮影するなんて!

< 1 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop