副社長とふたり暮らし=愛育される日々

二度目のおまじない=抱きしめて、キス



布団から出るのが億劫になる、寒々しい冬の朝。

でも最近は、とてもすっきりとした気分で起き上がれる。今日はどんな一日になるだろう、そんな期待の芽が毎朝膨らむように。

相変わらず地味な普段着に着替えると、家から持ってきた布団をたたむ。本棚やパソコンが置いてある仕事部屋は、夜の間は私の寝床となっている。

洗面所で顔を洗い、キッチンへ移動したら朝ご飯の準備。私の一日の始まりはこんな感じだ。

今日は焼き魚にしようと、フライパンに鮭を並べていると、寝室のドアが開いて彼が現れる。

ちょっとぼーっとしたレアな寝起きの姿は、毎朝胸キュンを補給してくれるビタミン剤みたい。今なら、芳江さんが言っていたことがよくわかる。


「おはよう、瑞香」

「おはようございます」


お互いに挨拶して微笑むやりとりは、まだ少しくすぐったい。それより、“いってらっしゃい”と言うことのほうが、もっと照れ臭いけれど。

今日はお互いに仕事で、副社長は年明け初の出勤日だ。美味しい朝ご飯を作って、元気をチャージさせてあげないと。


年末年始は、元旦だけ実家に顔を出すと言って帰った彼だけど、そのほかはずっと一緒に過ごしてくれた。

大晦日はお酒を飲みながらふたりでカウントダウンをしたし、二日は初詣にも連れて行ってくれた。こんなに充実した連休を過ごせるとは、一週間前までは思ってもいなかった。

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