極上な彼の一途な独占欲
01. 悪魔が私を踊らせる
「レベルが低すぎる」


出た。

私は隣に座る男性を見やり、なんと反論してやろうか考えた。

腹が立つほど整った横顔、涼やかを通り越して冷たい瞳、嘲笑以外で笑みを浮かべているところを見たことがない唇。

髪はさっぱりと清潔に切られ、ぱらりと額にかかる前髪の色気すら頭に来る。


「まだ準備中です。本番までにすべての商品情報を頭に入れるよう、スケジューリングしていますので、ご心配なく」

「『本番までに』『頭に入れる』?」


右手に持ったペンを口元に当てて頬杖をついた彼は、私のほうを見もせず、はっと酷薄に鼻で笑う。


「まさか頭に入れて終わりなんて思ってないだろうな。ショーに来るお客様は、あれよりはるかに商品に詳しい。本人が恥をかこうが知ったことじゃないが、うちの評価が下がる。いないほうがマシだ」


彼は"あれ"と口にするのと同時に、顎でぞんざいに前方を指してみせた。そこでは私の会社がマネジメントする、30名ほどのイベントコンパニオンたちが研修を受けている。


「質疑応答のロールプレイングも研修予定に入れています」

「とてもそんな段階に達しているようには見えないが」

「先ほども申し上げた通り、彼女たちはまだ準備中なんです。過去にも私どもは同様の研修で、立派に務めを果たせる女性スタッフを育成してきました。お任せください」


コンパニオンたちのプロフィールが書いてあるファイルをぱらぱらとめくりながら、彼が横目で私を見た。口元にはおなじみの、蔑みの笑み。


「"女性スタッフ"ね」


伊吹尊(いぶきたける)。現在私のクライアント。年齢は知らない、たぶん30代前半。容姿だけはいい、それは認めざるを得ない。

でも鬼。悪魔。冷血漢のサディスト。血も涙もない人でなし。大っ嫌い。


「そうです」


私は暴風雨状態の心を押し隠し、自信に満ちた笑顔で言い切った。

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