極上な彼の一途な独占欲
02. それはずるいんじゃないですか
「今日はAローテだよ。持ち場、頭に入ってる?」


はい、と全員の元気な声が重なった。

ガイドスタッフ18名、受付6名、プレゼンター5名、モデル2名。ひとりひとりのヘアメイク、衣装、状態を確認し、「かわいいよ」「きれいだよ」と気持ちを込めて伝える。

人前に立つ直前、意識を整える大切な儀式。


「開場5分前です!」


ブースの運営を行う、広告代理店の営業さんが号令をかけた。

清掃中のフィールドスタッフや伊吹さんたちクライアント、運営会社、制作会社の面々が一度ブースから出て、無人の状態をチェックする。

ふんだんに使われた照明が、磨き上げられた展示車のボディラインを美しく浮かび上がらせ、周囲を見てもひと際目立つ、私たちのブース。


「問題ない」


伊吹さんが満足そうにうなずいた。

それを確認した代理店さんが、全員に向かって言う。


「オートショー二日目、プレスデー。お客様入ります!」




寝不足だ。

ショー初日である昨日、初のステージワークをこなしたモデルたちの衣装や動きを再調整していたら夜が明けていた。

緊張感からか眠気はない。けれど身体も頭も、休息を欲しているのがわかる。

せめて体力だけは衰えさせまいと、がっつり食べることにした。


「すみません、カレー大盛」

「はあい」


ショー会場の二階には、関係者専用の食堂フロアがある。一般の来場客は入れない場所で、メニューはカレー、オムライス、カツ丼、ラーメン。以上。

スタッフはプリペイドカードを持っており、ここで好きに食べられるのだけれど、あまりのメニューの自由度のなさに、会期中にたいてい飽きる。
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