塩顔男子とバツイチ女子
4.北斗星




「蒼くんの革ジャン、年季入ってるよね。シワとか色落ちとか、結構着込んでるでしょ?」

「美白(みしろ)、分かってんね。これ、高校の時にバイト代貯めて買ったやつ。北斗も同じやつ持ってんだけど、コイツいつの間にか綺麗め路線行っちゃって。つか、もうさすがに革ジャン寒いわ」

「蒼くん、ガリガリだもん。余計じゃない?」

「ガリガリってのが余計だよ。いくら食っても太れねーんだよ」


アッハッハ、なんて二人して笑ってる。どうしてこうなるのかサッパリ分からない。


一週間前、玉木にガンガン言って、まぁ結果的に俺が泣かせた。俺も内心泣きたかったけどね。ビンタ食らったのなんて初めてだったし。
玉木はあの時、蒼に謝ると言った。そしてその翌日、本当に蒼に謝ったのだ。


『マジやべー!俺をボロクソにフッた事、玉木が謝ってきたんだけど。北斗にガンガン言われて反省したって言ってたぜ。てかお前、ビンタ食らったの?(笑)』って連絡が来た。笑う所じゃねーだろ。


それから一週間。今日は次の授業の予習をしながら昼メシにしようと思ってたから、すでに教室にいるんだけど。

俺の前にはなぜか蒼と玉木が座っている。しかもお互い、“蒼くん”“美白”なんて呼び合っている。美白(みしろ)ってのは玉木の名前。玉木美白ってフルネームを、俺はついさっき知った。もしかしたら以前、蒼から聞いたかも知れないけど記憶にない。


「…何なの」

「何なのって、今メシ食ってんじゃん」


蒼は、お前こそ何が?って顔で見てくる。
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