別れるための28日の蜜日
2月25日
「ダメですよ。今週は何があっても残業はしませんから。これはもう、明日処理します。おそいっておっしゃるなら他の人に頼んでください」

キッパリハッキリ言い切ると、目の前の部長が眉をハの字にして分かりやすく肩を落とした。

世の中の総務部の部長さんは大抵、営業や企画の部長さんより穏やかでのんびりした人が多い気がする。
我が社でも例に漏れず、総務部長はゆったりとした恰幅の良いおじちゃんだ。おじさまってよりおじちゃんの方がしっくりくる庶民派の雰囲気を漂わせている。

難点はうっかりさんだって事くらい。そのせいで締め切り前日に書類を存在を思い出して頼まれる事も珍しくない。

でも穏やかで低姿勢な部長の頼み事は基本、断らない事にしてる。無茶を言われる事もほとんどないし、ちょっとくらい残業してでもやってあげる。それに、やってあげたいと思える愛されキャラの上司なのだ。

でも今月、って言うか今週はダメだ。たとえ律人の帰りが遅いとしても、残業なんかしてたら買い物も料理も時間が足りなくなってしまう。
しかも、勘付いてる律人の帰りは月曜日から早めなのだ。

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