Snow Drop~天国への手紙~(上)【実話】
ジャンケンをしよう?
チュンッチュンッ…

『えっ…』

外を見ると明るい。
鳥の鳴き声で気付いた。

朝だ。

あこは帰ってきてから、ベッドの上で体育座りをしたまま一睡もできずにいた。


大学行かなきゃ…

動きたくないと言っている体をいじめるように無理矢理動かす。


あこはケンを選んだの。

あっちゃんもあこを突き放したの。

そうだ。
あこはケンの隣で幸せになることを選んだの。

あこはそっと何かを押し殺す様にもう一度、心を決めた。

『…行ってきます。』
準備をして、朝食は食べずに家を出た。

食欲なんてない。

『スゥッ…』

朝の空気を胸一杯に吸い込んでみる。

大丈夫。
ほらね?いつもと変わらない朝。

今日もあの角でケンは待ってる。

『ケーンー!おはよッッ☆』
ポンッっとケンの左肩を叩いた。

「おはよっ!
行こうぜ☆」

なんだかホッとした。
昨日の事なんて無かったかの様に、ケンはいつもと変わらない笑顔であこの手を握った。

いつもと変わらない空。

いつもと変わらない景色。

いつもと変わらない道。

いつもと同じ優しい手。

いつもと変わらない大学。

大学の正門が見えた時だった。

ケンが立ち止まった。
「あこ、ちょっとそのピンキーリング貸して?
サイズ確認したいんだ!」
ケンは右手をあこに差し出した。
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