甘々なボスに、とろけそうです。
07:キス


キス
____*



「ごめんね。誘った張本人が間に合わなくて」


「社長は常に時間に追われてるからな……仕事しすぎなんだよ。あれじゃ身体がいくつあっても足りない」


「だから最近、兄さんの仕事頼まれてるんでしょ? 頑張ってねぇー」


どうして気づかなかったのだろう。目の前の里香子さんと、その隣に座る我が兄の、左手の薬指に――お揃いの指輪が輝いていることに。

シンプルなシルバーのリング。婚約指輪というやつだろうか。


(2人が、結婚かぁ……)


夜景の見えるレストランの、窓際の席に案内された私たち3人。そして、私の隣の空席には、もちろんボスが座る予定なのだが。

急な仕事が入り、先に3人で始めることになった。


「乾杯」


掲げたのは、白ワイン。空腹にコーヒーで胸焼けし、そこに白ワインは……苦しい。悪酔いせぬよう、胃袋になにか入れなくては。

でも、高級レストランなんて不慣れなもので、なにから食べたらいいやら。運ばれてきた料理名を聞いたが、単語はいくつか覚えていても長すぎて忘れてしまった。

こんな時、ウィルくんなら、1度で丸暗記して全部スラスラと呪文のように唱えられてしまうのだろうな。


(……!! これは……っ!!)


イベリコ豚……だっけ? 生ハム最高ぉお!

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