男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
男装の伯爵令嬢

◇◇◇

なにかの気配がして、ふと目覚めると、窓から差し込む月明かりが、キラリと刃を光らせていた。

ベッドで仰向けに寝ている私の鼻先に、剣先が突きつけられているのだ。

汚く笑う声がして、暗がりの中にぼんやりと、髭面の見知らぬ男の顔が見えていた。


「フォーレル伯爵の娘、ステファニーだな?
ちょいと起きて、屋敷ん中案内してもらおうか。
お宝、探したんだけどよ、これっぽっちしかねぇんだわ。どこに隠してあるんだい?」


夜盗に奇襲されて驚いたのは一瞬のこと。

部屋の中に素早く視線を配り、この男の他に侵入者はいないと判断する。

耳をそばだてても男の荒い鼻息しか聞こえず、屋敷の中は静かで、家族も使用人も皆、眠りの中にいるようだ。


なんだ、ひとりか。つまんないの……。


夜盗の右手には錆びた剣が握られて、それはまだ下されることなく、私の鼻先に突きつけられている。

左手が握るのは麻袋。

袋の膨らみ方が僅かなところを見ると、中身は少々のお金と、銀のナイフとフォークくらいだろう。


伯爵家と言っても、うちは落ちぶれた田舎貴族。

盗れる物など、元からほとんど存在しなかった。

< 1 / 355 >

この作品をシェア

pagetop