男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

「ス、ス、ステファニーの髪が……」


そう言って椅子から滑り落ちたのは母で、床に倒れて気を失ってしまった。

使用人たちが慌てて母に駆け寄って、介抱してくれている。

私の髪に執着していた母だから、ショックを受けると予想してはいたけれど、まさか失神するほどとは……。


一方父は、落ちぶれても伯爵だ。

驚いた後は表情を引き締めて、なにかを決意したかのように深く頷いた。

椅子から立ち上がってゆっくりと歩み寄り、私の両肩に手を乗せて、太い声で言う。


「お前がそこまでするのなら、ワシも覚悟を決めよう。ステファニー、大公の城に行ってくれ。くれぐれも女とバレんようにな」


「はい、お父様」


厳しい顔の父に合わせて、私も口元を引き結び、緊張した硬い表情を作っていた。

でも心の中は浮かれている。


ああ、男として都に行けるなんて嬉しいな……。

大公の城では、どんな刺激的な毎日が待っているのだろう?

そう考えたら、期待に胸が膨らんで、今すぐにでも出発したい気持ちになっていた。

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