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兄の身代わりをすると宣言した日から、十日ほど経った日のこと。

我が家を出て、やっとモンテクレール家の直轄領に入ったときには陽も傾き始め、出発から半日ほどが経過していた。


途中の村で馬を交換した以外、ほとんど休みなく馬車に揺られ続けるのは、結構つらい。

お尻が痺れて、感覚が麻痺してきている。

もしかすると皮が剥けているのではないかと、心配にもなる。


自分で馬を走らせた方が私には楽なのに、大公殿下がお迎えの馬車をわざわざ寄越すから、乗らないという訳にいかなかった。

その御配慮に感謝するというよりは、まるで幽閉されに行くみたいだと感じている。

うちからひとりも使用人を連れて行ってはいけないと言われ、荷物も必要最低限の衣類の入った鞄ひとつだけ。

愛剣を持っていきたいという希望も、却下されてしまった。


私の隣に座るのは、きちんとした従者の身なりをした浅黒い肌の青年で、名前はジャコブ。

大公家から遣わされてきた人だ。


この人が、教育期間中の私の身の回りの世話もしてくれるということだが、不満に思う。

ジャコブは、出発してからずっと無口で無愛想。

大公家の城下街とは、どんなところかと質問したら、返ってきたのは『ご覧になればわかります』という淡々とした言葉。