「桐島‼︎」


「三谷さん‼︎」


まだ真新しいホテルのロビーで、私は元上司であり、私を副支配人にまで抜擢してくれた三谷さんと固く握手を交わした。


「久しぶりだな。お前の噂はいつも耳にしてたぞ」


「三谷さんの教えのお陰です。でも私が副支配人だなんて__」


「いや遅いくらいだ。俺の目に狂いはないからな。枕BARもちゃんとあるぞ」


そう言って、フロントの脇を指差した。


「枕バー」というのは、様々な枕をお客様が選択できるというものだ。私はいつも旅先にはマイ枕を持参する。形が高さが変わるだけでも眠れない、そんなお客様も多いだろうも発案したアイデアは、今や全国区となった。


「今回も弐勢神宮ということで、幾つかアイデアを考えてきたんです」


「さすが桐島。期待してるからな」


はい、と元気に頷いた。


それからザッとホテル内を案内してもらう。


12階建てで客室が120室、部屋のグレードは4段階ある。6階には大浴場があり、仕事の疲れを癒す憩いの場となっていた。朝食は無料、そのメニューを増やしたのも、なにを隠そう私のアイデアだ。ご飯だけじゃなく、何種類かのお粥は女性に好評だった。


「桐島、今、彼氏は?」


「はい?」


「いや、結婚はまだいい。でも出産となると、産休になるだろ?それは軌道に乗るまで__」


「ご安心下さい‼︎」


やや大きめの声で遮ると、三谷さん__いや、三谷支配人は笑った。


笑うと目尻に皺ができる。


ホッとするというか、胸がキュッと痛むというか__。


私は__三谷さんが好きだったから。