ヴァージンの不埒な欲望
再び、決心

私は右手で持った名刺を見つめながら、もう何度目かわからない小さな呟きをもらした。

「AK(エーケー)パートナーズ、コンサルタント、安西 拓夢(あんざいひろむ)」

私がその人──拓夢さんのレッスンを受ける事に同意した後、「では、改めて自己紹介を」と、この名刺を渡された。

名前で呼ぶのも、拓夢さん本人の希望だったりする。

年令は三十三才。二年半前に大学の同期生で、就職先も一緒だった加賀見 徹(かがみとおる)さんと、経営コンサルタントの会社を起こした。

市内のマンションに一人暮らし。独身で恋人もいないそうだ。

拓夢さんの簡単な自己紹介の後、質問はないかと訊かれたが、とっさに何も出てこなかった私。フルフルと首を横に振った。

「じゃあ今度は、愛美(あいみ)ちゃんの事を教えて」

拓夢さんの口調が少し砕けたものになり、名前を呼ばれた事にドキッとした。でもここで、私は一つ訂正をしなければならない。

「あの!私の名前、愛美と書いて『あみ』ていうんです。すみません!ややこしくて」

苦笑しながら、私は早口で捲し立てた。

「私、全然名前のイメージに合ってなくて。よく『名前負け』て言われました。おまけに『愛美』と書いて『あみ』て読ませるなんて。私なんかの名前がわかりづらくて、さらにすみません!ていつも思うんです!」

一気に言って、ハァ~と息を吐いた。

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