そのイケメン、オタクですから!

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そんな日々を越えて、迎えた選挙当日。

「カンパーイ」
それぞれ自分のマグカップを手にして高く掲げる。
お酒というわけにはいかないから、中身はもちろんジュースなんだけれど。

及川先輩と桜井先輩。
なっちゃんと私。

終わってみれば結果は及川先輩の圧勝だった。

開票の時ほとんど及川先輩の名前しか呼ばれなかったものだから、気まずくて斎藤先輩の顔は見られなかった。
私としては正直留飲が下がる思いだったんだけどね。

そして先輩の勝利は私の努力のおかげ、と思いたいけど……。

悔しいけど実力だったんだと思う。

先輩の選挙演説は私が考えたものの数倍分かりやすかったし、最後の言葉は生徒たちの心を掴んだと思う。

「俺が生徒会長になったら、今より学校に来るのが楽しみにしてみせる。俺の事、信じてくれよ」

甘いマスクに聞き取りやすい低い声。
この人に信じてくれって言われたら、信じたくなると思う。

私じゃなくても。
だからこその結果なんだ。

「先輩、おめでとうございます」
よっちゃんが言うと「おう、色々サンキュ」って口の端を上げる及川先輩。

私が「おめでとうございます」と言うと「当然だろ」って意地悪な笑みになる。

何か差がつけられてる気がするけど、いつもの事だから気にしない。
それよりやっと、一歩前に進んだんだもん。

ストレスだらけのバイトと生徒会の日々に終わりを告げて、ナナと私は一人になるんだ。
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