そのイケメン、オタクですから!
第3章 ご主人様は勉強がお得意

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期末テストまで2週間。
無理言ってバイトは土日だけにしてもらって、生徒会室に向かう。

今は踊って歌ってる場合じゃないんだもん。
休んでるうちに常連様が離れちゃうことが気になるけれど、たった2週間だもんね。

でも、足取りは重い。
よっちゃんも一緒に行こうって誘ったのに、自習室の方が集中できると断られてしまった。

いつも親身になって相談に乗ってくれるよっちゃんだけれど、こういう時はクールなんだよね。だから成績優秀なんだと思うけれど。

それにしても、アルバイトの自由化の文字を見た時は何でも頑張れると思ったけれど、勉強だけは別だよ。

高校受験の時は家に帰りたくないのが理由で予備校の自習室に通っていた。
決して勉強が好きなわけじゃない。

だけど今さら逃げ出す事もできない。
そんな事したら及川先輩に何て言われるか。

また変な妄想をしそうになった頭を振り払ったら、目の前にいつものドア。
もう着いちゃった。

「よろしくお願いします」
すでに開け慣れたドアを引いて頭を下げる。

……あれ?
先輩、まさか一人?

長机の前に座っていたのは及川先輩一人で「早く座れ」と隣の椅子が引かれる。

「あのー、桜井先輩は……?」
尋ねると面倒くさそうに及川先輩が答える。
「あいつがこんな面倒くせーことに付き合うわけないだろ。さっさとやるぞ。
これ去年の数学と化学だから、1時間でやってみろ」
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