君が嫌いな君が好き
「やっぱり、できないんじゃない」

そう言った私に、
「何だって?」

彼のその声はイラついていた。

「年下のくせに、弟とたいして年齢が変わんないくせに、えらそうに説教してんじゃないわよ。

できもしないくせに訳わかんないことを言って、初対面の人間に悪いところを指摘してんじゃないわよ」

バン!

財布から1万円札を取り出して、それをたたきつけるようにテーブルのうえに置いた。

「マスター、お勘定」

「あっ、はい…」

お勘定を済ませ、マスターから受け取ったおつりを財布の中に放り込んだ。

カバンの中に財布を押しこむと、その場から立ち去ろうとした…だけど、二の腕をつかんできたその手が私を引き止めた。

「何よ」

視線を向けると、つかんでいる手の持ち主である彼が私を見ていた。
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