君が嫌いな君が好き
そうやって気持ちを切り替えると、ベッドから抜け出した。

散らばっていた下着と服を手早く身につけると、財布から1万円札を取り出した。

『ありがとうございました

ホテル代の足しにはならないと思いますが、1万円を置いておきます』

電話のそばにあったメモ帳にそう書いた後、自分の名前を書こうかどうしようかと迷った。

…書かなくていいか。

どうせもう2度と会わないし、日が経つにつれて彼も私のことを忘れることだろう。

もう1度だけ彼の方に視線を向けると、まだ眠っていた。

「では、さようなら」

彼の寝顔に向かってそう呟くと、静かに部屋を後にした。

弟と同級生であろう彼から説教を受けて、思わずカッとなって挑発してしまったけれど…結果的には処女を捨てるいいきっかけになったのだ。

この時の私はそう思っていた。
< 18 / 65 >

この作品をシェア

pagetop