君が嫌いな君が好き
君しかいらないからそばにいて
久米との作業は特に滞りなく、最後まで進んだ。

途中から彼に結婚のことを口に出されたらどうしようかと思っていたけれど、そんな心配も杞憂に終わった。

これで直接言われてしまったら、私の心はポッキリと根本から折れてしまっていたことだろう。


今日は完成披露会見である。

「本当に無事に迎えられてよかった…」

会場の準備に勤しんでいるスタッフたちを見ながら、私は呟いた。

この会見を終えてしまえば、久米と会うのはこれっきりだ。

もうこれで本当に彼と会うことは2度とないだろう。

そう思っていたら、
「梅乃」

私の名前を呼んだその声に、ギクリと躰が震えた。

名前を呼ばれるのは、あのデート以来である。
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