溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
最難関を攻略せよ


大勢の人波に揉まれながら、流されるようにして足を進める。
目的の場所が一歩一歩近づくにつれ、私の心臓はドクドクドクと血流を激しくさせていた。

待ち合わせ場所は、会場入口の左手。
その姿を探しながら、若干高い年齢層の人の間を縫って行く。

まだ来ていないのかも。
いや、いっそのこと来なければいいのに。

そんなことを思った次の瞬間、私の目は、その姿をはっきりと捕えた。
パンフレットか、手にしたものをパラパラとめくっている。

高まる緊張は、恐怖心からによるものが大部分を占めていた。

人の流れに抗うことができず、惰性のようにその場所へ。
そこからなんとか脱出し、トンと足を揃えてその人の前へ立った。

ゆっくりと、そして迫力満点に顔が上げられる。
すぐに私が誰だかわからなかったのか、“なに、この人は”と目が語っていた。
ところが数秒後、その目に敵意のようなものが浮かんだ。


「ちょっとあなた、こんなところでなにをしているの」


妙な抑揚をつけて、まるで歌うように私に言う。
京介さんのお母様だった。

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