癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
恋心?
気が付くと、自分はベッドの上。
手には点滴のチューブがつながっていた。
あれ?ここはどこ?そう思っていたら、

「まみちゃん、気がついた?」

井口先生のところのさやかさんだった。

「まみちゃん、急に倒れたんだって。
B.Cコンピュータの松浦社長がまみちゃんを
お姫様だっこしてここまで連れてきたの。
王子様って感じだったわよ。」

「えっ、松浦社長が?」

驚きだった。

ぼんやりと思い出してみる。
確か、カフェの上がりの時間が近くて、マスターに

「まみちゃん、これ、管理室に届けてきて?
そしたら上がってもらっていいから。」

そういわれたんだっけ。
頼まれたのは携帯用のドライバーセット。
いつも田中さんが使う席のところにあった忘れ物。
うちに来るお客さんで工具なんてつかうのは
田中さんくらいだろうということで、管理室に行ったんだっけ。
そしたら、松浦社長に会って、びっくりして…。それで倒れたの?

「えぇ、そうよ。『井口、頼む』って言ってね。
まみちゃんのことが心配でたまらないって感じだったわ。」

「そっ、そうなんですか…。」

「今、先生に声をかけてくるわね。」

さやかさんは先生を呼びに行った。ご
夫婦ではあるが、ここは職場でもあるため、
「先生」「さやかさん」と呼び合っている。

「まみちゃん、気がついた?顔色もいいし、大丈夫そうだね。」

「先生、ありがとうございます。」

「ここに運ばれてきたとき、顔色は悪かったけど、
熱もないし、心音も異常なかったから、
ゆっくり休めば大丈夫だと思ったんだけど、
倒れた理由、何か心当たりある?」
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