癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
決心
悟さんへの気持ちを自覚した私は、
いままで以上に仕事に集中した。
悟さんに自分の思いを伝えると決めたことで、
自分の中の心の張りのようなものにつながっている。

カフェには癒しの田中さんは現れなくなったが、
井口先生と時折、悟さんが一緒に訪れるようになった。
お客さんと店員という立場なので、
あまり話はできないが、スーツ姿でイケメンの彼が、
柔らかな笑顔を見せてくれることは嬉しくもあり、
お店にいる私以外の人もその姿を見ているかもしれない
という不安でもあった。
私の中にも人に対する独占欲があるのだと思った。

B.Cコンピュータからの翻訳の仕事は、
随時Web上の専用ページにアップしていったため、
9月20日には、ほぼ終わった。

9月25日になって、開発の小林さんから連絡があった。

「もしもし、白石さんでしょうか。
B.Cコンピュータの小林です。」

「はい。いつもお世話になっております。」

「こちらこそ、このたびはありがとうございました。
それで、今後のことを含め、
今月30日に社の方へおいでいただけますでしょうか。」

「かしこまりました。
それで、何時に伺えばよろしいでしょうか。」

「午後4時でいかがでしょうか。」

「午後4時ですね。承知いたしました。」

「それでは、よろしくお願いいたします。」

いつもの事務的な電話だった。

9月30日、
この話のあと悟さんは時間をとってくださるだろうか。
とりあえず、悟さんにメールを入れた。

【白石です。さきほど、御社の小林さんから
9月30日午後4時から打ち合わせと連絡がありました。
この日に悟さんにお話ししたいことがありますので、
打ち合わせ後、お時間をとっていただけるとうれしいです。
よろしくお願いします。】

なんだか自分で入力していて、
小林さんのことは言えないくらい事務的だなって思って、
おかしくなった。
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