ご褒美
ご褒美
「けーんご」

人もまばらなお昼休み。

デスクに向かっていた顕吾のあたまをわしゃわしゃ撫でまわすと、銀縁眼鏡のレンズの向こうから、冷たい視線がこちらへと送られた。

「……」

あきらかに怒っている顕吾は、無言で乱れた髪をなおしている。

終わると、椅子を回転させて私の方を向いた。

……一分の隙もなく着込まれたスーツ。
首元まできっちりと締められたネクタイ。
冷たく光る銀縁の眼鏡。
レンズの奥の、すぅーっと細められた瞳。

これにドキドキするなという方が無理だと思う。

そして私は、これから顕吾の口から出るであろう言葉を、期待して待っている。

……お仕置き、だね。

毎回顕吾は怒るたび、そう云って不敵に唇を歪ませて笑うのだ。

前回のお仕置きは、人気のない資料室で社内だというのに顕吾の気のすむまで、キスされた。
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