ジンクス
ジンクス
——私の彼氏は、結構冷たい。

「……置いて行かれたいわけ?」

家を出るのに、なかなかサンダルのストラップが留められなくて手間取ってたら、頭上から冷たい声。

「ちょっと待って!
もうできるから」

「あと十秒。九、八……」

無情にも始まるカウントダウン。
焦れば焦るほど、留まらない。

「……二、一、」

「留まった!」
 
なんとなく勝ち誇った気分でちらっと見上げると……奴が頬を片方だけ少し上げて、笑った気がした。

「いくぞ」

「はい」
 
奴は私が立ち上がるのなんか待たずに、さっさと歩き出す。
私も慌ててそのあとを追いかけた。
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