ビルの恋
フレンチ・シリウス
その後、伊坂君とのB.C.Square Tokyo探検は、7階のイタリアン、フレンチのランチが続いた。

残っているのは、53階のフレンチ・シリウスのみ。

ここは超人気店で、予約困難。

行こうと思ってから予約成立まで2か月かかった。

その間、私たちはBar54で会うのが習慣になっていた。

今日もBar54で待ち合わせだ。

先に着き、いつもの席に案内される。

担当は堺さんだ。

「いらっしゃいませ。今日は何になさいますか?」

あの日以来、堺さんがいれば必ず担当してくれる。

「ノンアルコールでショートのものを」

「珍しいですね。次の予定がおありですか」

「はい。シリウスの予約が取れたんです」

「そうですか、それは楽しみですね」

堺さんはにっこり笑うと、オレンジとレモンを切った。

それをシェークグラスに絞り入れる。

砂糖ひとかけ、ビタースごく少量。

仕上げにシェイクして、カクテルグラスに注ぐ。

「フロリダです」

「ありがとうございます」

一口すする。

オレンジとレモンの酸味がとても美味しい。

「緊張してるんです。伊坂君もフレンチは不慣れなようだし」

「大丈夫ですよ。基本を押さえておけば、あとはお好きに楽しんで大丈夫です」

「基本?」

「コースで頼むか、アラカルトで頼むか。
ワインをどんな感じで楽しみたいか、です」

「例えばですね」

堺さんがカウンター下からタブレットを取り出した。

画面を操作して、渡してくれる。

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