ビルの恋
ホテル・BCS東京
二週間後。

私は久しぶりに管理室を訪ね、紀美子さんに近況報告をした。

「そんな理由があったの!ロマンチックねー。
彼にしたら、運命の再会だったわけね」

ほぅ、と紀美子さんがため息をついた。
今日も管理室でランチだ。

「それで?その後どうなったの?」

紀美子さんが楽しそうに聞く。

「それが、特に進展なしで」

私は申し訳ない感じで答える。

紀美子さんが目を丸くした。

「・・・ビルの中の飲食店全部でご飯食べて、そのあと何もないの?」

そうなのだ。

伊坂君は、キスまでは割と早かったのに、そのあと停滞中だ。

仕事が忙しいのか、草食系なのか、それとも私に原因があるのか、よくわからない。

思えば、会う日も伊坂君都合で決まることがほとんどだし、無意識かもしれないが、かなりマイペースなのは間違いないだろう。

紀美子さんとちゃぶ台に向かい合い、黙ってデザートの胡麻団子を食べた。
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