愛しの残念眼鏡王子
2LDKの一戸建ての賃貸で、家賃はたったの三万五千円。

多少築年数が経っているから、老朽化している感は否めないけれど、住むには充分な広さだ。

入社から三ヵ月間は試用期間。
それもあと残りわずか。

最初来た時、三ヶ月後もここで生活していけるか不安だったけど……今なら自信が持てる。

ここでこれからも生活していけるって。

歩みを進めていると、背後から聞こえてきた足音。

足を止め振り返ると、遠くから見えたのは必死に駆け寄ってくる専務の姿だった。


「え、専務?」

どうして専務が?

頭の中はハテナマークで埋め尽くされていき、ただ呆然と専務が駆け寄ってくるのを見つめてしまう。


「よかっ……た、追いついて」

そして私の目の前で足を止めると、大きく肩で呼吸しながら、途切れ途切れに話し出した。
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