「話が積もり積もって、まだ終わってないみたいだね~」


 千奈美がうとうとし始めたから私たちは退散して、あの公園まで戻ってきていた。

 公園のブランコに男二人が腰掛けて話し込んでいる様はなかなかシュール。


「ちょっと、待とうか」


 二人は私たちに気がついていないみたいで、途切れ途切れに会話が聞こえてくる。
 公園の柵に腰掛けて、啓子と私は二人の積もる話が終わるのを待つ。


「俺、自分がもっとマシな人間だと思ってた」


 盗み見た夏樹は頭を抱えていて、俊輔くんはゆらゆらブランコを揺らしていた。


「みんなヤってるし、生でヤった方が気持ちイイしカッコイーとか思って」


 聞こえてくる断片的な言葉を、耳が勝手に繋ぎ合わせる。


「千奈美に無理さして、俺わかってたのに。でも、ちょっと無理やりヤっちゃうぐらいの方がイイとか、バカだった」


 本当にバカバカしい、夏樹の気持ち。

 あのときのエレベーターの中で聞いた、千奈美の初体験が脳裏に過ぎる。
 性病になってるかもって言ってたけど、それは大丈夫だったんだろうか。


「でも、千奈美に妊娠したかもって言われて……後悔よりも、千奈美に腹が立った。」


 お金を押し付けて、一方的に別れを告げた。
 なに勝手に妊娠してんだよ、って。
 妊娠させたのはそっちなのに、なんて滑稽な言葉なんだろう。


「ほとんどレイプしたようなもんなのに……!」


 デートDVにデートレイプ。
 訴えたらどうなるんだろう。


「千奈美と別れて、千奈美が中絶したらそれで全部お終いになると思ってた。今までのこと全部なかったことにして、元に戻れると思った」


 千奈美のお腹はほとんど出ていなかったし、胎動するにも早すぎる。
 千奈美はつわりがなくなったとかで、赤ちゃんがいなくなってしまったことを実感したんだろうな。
 でも、千奈美以外の人たちは?

 もしも千奈美が今までのこと全部ウソでしたって言ったら、私でさえ信じてしまいそうになる。

 赤ちゃんは確かにそこにいて、生きて死んでしまったのに、全部なかったことになるの?


「でも、やっぱり怖くて……ベラベラ言いふらして、なんでもないフリしなきゃ不安で押しつぶされそうだった」


 なんて身勝手なんだろう。


「ダチも笑って聞いてたけど、陰で俺のことを罵っていたのを知って……その時に千奈美のダチから、千奈美が病院に行ったことを聞いて……取り繕ったんだ」


 私が夏樹の高校に行ったとき、千奈美の妊娠をみんなが知っていた。
 知っていて、笑いながら夏樹のことをからかっていた。