３ヶ月だけのママ~友達が妊娠した17才の夏~

第24話「未来へ」

　俊輔くんは、自分の夢のために赤ちゃんを犠牲にした。
　だから、絶対に夢を叶えなくちゃいけないって頑張っている。
　夢は、お父さんの病院を継ぐことなんだって。

　そのために、東京の志望大学を目指してずっと勉強している。
　赤ちゃんを死なせた自分が目指すのは矛盾してるって思いながらも、たくさんの命を救う将来のために頑張ってる。


　啓子は養護教諭――いわゆる、保健室の先生になりたいみたい。
　それで、生徒にちゃんとした性教育をしてあげたいって。

　千奈美にちゃんと自分の体験を話せていたら、千奈美が辛い思いをするのを防げたかも知れない。
　それをまだ後悔している。

　だから、養護教諭の資格が取れる学校を目指して勉強中。
　地元の大学に行くつもりだったけど、進路を変更して東京の大学だ。


　千奈美は早く自立したいと就職活動中。
　自分と子ども一人ぐらいなら養えるぐらいの自信をつけたいんだって。

　うちの学校は割と進学校だし、就活のノウハウがあんまりないみたいでちょっと大変みたい。
　ずっと、専門学校にでも進学して資格習得してからの就職でもいいんじゃないかって親に言われてるみたい。

　十八歳の誕生日前から教習所に通って、十八歳の誕生日を迎えてすぐに仮免取って路上デビューして、そのまま免許を取得した。
　私たちの中じゃ唯一の自動車免許持ち。
　一度だけ、近所をドライブに連れて行ってもらった。


　夏樹くんが今どうしているかは知らない。
　あそこも進学校だからクラスメイトもみんな進学するだろうし、夏樹くんもとりあえずは進学を選ぶのかもしれない。
　とりあえずは、自分が思っていたもっとマシな人間になるように努めているのかもしれない。

　あの時、俊輔くんに言っていた言葉。
　どんな人間が、夏樹くんの理想だったんだろう。
　少なくとも、次に恋人が妊娠したら産んで欲しいと言えるようにはなって欲しい。
　そうなるまでは、プラトニックなラブを貫けるぐらいには。
　その上で千奈美にああ言ったんでなければ、私は夏樹の野郎を絶対に許さない。


　そして私は、とりあえず進学を目指している。
　ちゃんとした目標を持って進路を選んだみんなと違って、なんとなく担任にすすめられるがままって感じ。

　アルバイトの経験もないし、就職して頑張っていくにはまだ心もとない。
　なにか資格を持っていたり職人的技術があるわけでもないから、大学で資格を取るのもいいかなって。
　お姉ちゃんも大学を卒業しているし、なんとなく前に習え。

　不本意ながら、私は案外夏樹の野郎に一番近いのかもしれない。
　ショックだ。
　だから、夢とかなくても堅実で誠実で真面目な人生を歩もうと思う。
　平凡が一番だ。
　そんな、前向きか後ろ向きかわからない人生。

　それでも、私は……