狼陛下と仮初めの王妃
妃のつとめ


婚姻前夜、コレットはいつもの部屋ではなく、三階にある客間で就寝することになった。

今まで使用していたお部屋は、婚約者のそれから王妃仕様に変更中で、明日まで立ち入り禁止になっている。


「もう、明日なのね……」


コレットは、ベッドサイドにあるテーブルに置かれた紙を手に取った。

これは明日の予定が書かれているもので、今朝の食事の席で陛下に渡されたもの。


『君は覚えなくてもいい。目を通しておいてくれ。ただ私の横に立っていれば、それで十分だ』


陛下はそう言っていたけれど、そういうわけにはいかない。

コレットは何度も読んで復習し、頭に入れていた。

だけど、読むたびに題名の“婚姻の儀式”という文字がやけに大きく見えてしまう。

いよいよ明日、偽物王妃になる。

そう思うと、言い様のない気持ちに襲われる。

陛下に妃となるよう申し渡されてから一週間。

これまでは急激な環境の変化とアーシュレイの教育についていくのに懸命で、先のことを深く考える余裕がなかった。

今はこれと言ってすることがなく落ち着いているせいか、あれこれと不安なことばかりが頭をもたげてしまう。



< 65 / 245 >

この作品をシェア

pagetop