見えない僕と彼女の気持ち
見えない僕と彼女の気持ち
僕は変わった病気を患っている。
——愛情欠乏性透過症。
それが僕の病気につけられた名前だ。

 
この病気が発症したのは十歳のとき。

——父が死んだときのことだ。

父のことを深く愛していた母は、半ば壊れたような状態になってしまい、僕に見向きもしなく……というより、僕の存在を忘れてしまっていた。

両親からたくさんの愛情を注いでもらって育っていた僕は、急にふたりからの愛情を失い……そして。
透明になってしまった。

徐々にだったのか、一気にだったのか、もう記憶にないけれど。
気が付いたときには透明になっていた。

透明になってなにか困ったことがあったかといえば、これがなかったな。
だって、おかしくなってる母親とふたりっきりで家に閉じこもっていて、なにが困る?
母には僕が認識できてないし、僕は僕で空気みたいな存在になっていたから。

まあでも、そんな生活もそう長くは続かなかった。
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