秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
2.令嬢たちのたくらみ


ドルテア国は地方分権の進んだ国だ。
王政とはいえ、王家が絶対的な力をもって統治できるのは、自領である中央領に過ぎない。そして、中央領は大まかに四つに分けられていて、それぞれ王家の分家筋である公爵家が居を構えている。

現国王、ジークヴァルト=ファーレンハイトの実の弟にあたるカミル=ファーレンハイトは、二十歳になるときにバルテル公という爵位を授かり、カミル=バルテルとして中央領の中でも南の地域を管理している。

彼の娘のひとり、エリーゼの部屋では、小鳥のさえずりのような声が響いていた。


「コルネリア、これはどう?」

「エリーゼ。私、やっぱり……」


エメラルドグリーンの瞳をきらめかせて、鮮やかなマリーゴールドに似た色合いのドレスを広げてみせたのは、公爵令嬢・エリーゼである。それを困り眉で見つめるのは、濃い紫と黒の地味な色合いのドレスを着こんだ、ベレ伯爵の長女コルネリアであった。

ふたりはともに十七歳。
母親同士が姉妹であるため、まだ夜会に出るには早い年頃から顔を合わせる機会が多かった。
コルネリアはおとなしく、下に弟妹がいるせいか妙に大人びていて、甘えっ子のエリーゼには姉とも思えるような存在だった。

コルネリアは昨日からバルテル家に泊まり込んでいて、今日は第二王子主催の仮面舞踏会へそろって招待されているのだ。
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